そらいろキップ
汽車に乗り 眠り続ける少年の知らない
記憶の底の底の世界樹が
すべての、真実。
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死に方のわからない少年と
喫茶店の屋根裏に間借りをしていた詩人の記憶が床の影に残る。 冬の日の吐息と消えた。 いつの人生の物か定かではないのに。 部屋の床に散らばっている宛先のない手紙にも思える紙片の端は甲板に寝転がり眺めた夜空が脈をうつ。 あの夜と同じように触れてしまえば、背中を押され落とされた夜空。 13歳の頃から歳を重ねてしまう事を忘れてしまった彼の顔と身体に煙草の香りは不釣りあいだったけれど。 その香りがとても好きだった。 切手を貼る事ない手紙は、ふだんとは違う、もう1人の彼で。 遠い桜の夜の彼は誰かの体に宿りながら、みる事のない海の町へとつながっていく。 この手紙よりも満たされる事はないのに。この手紙が生まれる前に靴音が響く。
彼が外套のポケットからくすねた手帳の落書きに誘われるまま、ほんの数日のつもりで訪れた森は銀杏が敷きつめられていたので、ぼくらは枯れ葉から逃れる事ができないまま廃墟を塒にする事になった。 大人になる日まで。 屋上から触る事のできるメタセコイアの前髪の面影はテント芝居がさらってきた双子の生き別れです。 生き別れの給仕によるグスタフ・マーラー交響曲第9番は廃墟のひび割れつたあるき。 きみにもこの葉をわけてあげるよ。 遠巻きに学び舎にむかう人達をながめるぼくらは生きながら葬られたみたいだ。 彼の魂に感染する事ができるとしたら、この瞬間なのかもしれない。
埋められた踏切の通りは 空を汽車に閉じ込められて薄暗い 空が閉じ込められる前に ロシアを探しに歩いたので 出会ったばかりの彼がその事を知っているかのように 古本屋の前 古本屋は何故か教室の名残りがあった 前を歩いている彼の背中が西陽に燃えそうだったので あわてて Tシャツのすそを掴んだ時に 子供達が駆けて 青いうさぎが 電灯にかくれて笑っていた 彼の肋骨にさす影について 身体は宇宙の塵へとむかっていく あの時の住民がそうだった時も 影は13歳のままだったので 階段下の物置きから 送り続けた 影にむけた 信号のありかをみつけた いまごろだけど。
彼が自転車で川沿いへむかう道のりで これからの行先を言いあてる、あいつがあらわれたのは、空へ落とされた子供が笑う昼さがりで、それは幾度となく繰り返されてきた。 事の発端は、長い長いあくびと永遠を思わせる汽車の旅で、十字架が溶けていく葡萄酒の瓶の冷たさは、彼の友達の頬とおなじで、 なにひとつ もくろみもなく、床に転がる僕達の天井の扇風機はどの絵画よりも尊いものだったよ。 僕はこれからの行先をいいあてるあいつよりも、いままで肌重ねてきた人達をいいあてる きみの目の輝きのとりこになっていた。 ただ ただ 許されたかって。 人を救済する事の罪が火傷となりつきまとうから。 だから、いまも。 きみの目の輝きを待っている。 たぶん きみに再び出会うまで 許される事も救われる事もなくて あの森の家 顔を忘れてしまった祝宴の雑魚寝で待っているよ
集合住宅の3階のその先の屋上はまぼろしだったので居場所ない凧がふてくされたように ゆられていた この記憶がぼんやりとしていて不確かなのは その数年前に この世界に存在していなくて この世に存在していない兄にたえず呼ばれ続けているからなのだと思う 彼がいるのは 決まって柿の木がみえる その橙と赤は青空から忘れされていた 窓のカーテンのゆらぎで 陽射しの中かくれんぼしていた 彼が僕の指をつかい描く それは 何の形にもならず ただ ただくやしい思いがつのっていた たぶん それは秋と呼ばれる時間だった
なんのあてもなく
確かなものもなく 城壁を越えたのは 生まれる前からの 友達が待っているから あの むこうがわに 顔もわからない 名前もわからない 彼がいるのは 橙の灯りがともる街 みんなに知られる事もなく 忘れさられた街を 路面電車が通っていきました 乗っているのは 星空の仮面の人ばかりだから 僕は不安になる ねぇ たとえば不安になっている僕がこの座席に座っているとしたら いまから到着する 駅にいる僕は 誰になると思う? 鞄に隠れている 彼は まだ 形にならなくて 真夜中の笛のように 話しかけてくれるから すこしだけ 安心できる 駅で看板を みあげる僕は しろく ぼんやり うすあおく ひかる 手紙に 城壁に置き忘れてきた それは わざと 城壁に置き忘れてきた 友達のことを思い浮かべていた
生まれついての幽閉な少年は、天の窓の向こう側のほうが幽閉だと思ってる、あんなヤツのどこがいいんだよ?。
確かに生まれついての幽閉だけれど、例えば、雨垂れに混じって、血まみれチマチマ泡ぶくぶくな人達が、落ちてくるのを眺めているとだね、何故か苦悶の満ち潮で、知らない島で戦争をしようとはりきっていたくせに、自分の子供が吹き飛ばされて大騒ぎの見苦しさったら、血の海の底で銭漁りだよね。 そんな人達に比べてみたら、あの星が瞬く前から、この天の窓に幽閉されてる、おれはなんて、自由なんだろうって。 君たちだって、そう思うだろ?。 僕は、ギクッとしました。 ぼくはこんな理屈をこねるヤツに弱いのです。 何するんだよ?。ぼくが僕を睨むのは、幽閉少年の瞬く星なんかより、ずっと素敵なんだ。 理屈をこねるヤツに弱いなら、強くするために、痛めつけるのさ。 ネェ、こうしていると、敷物になった虎の気持ちがわかるだろ?。 虎というより、小人に磔にされてるみたいで、いい気持ちがしないよ。 しばらく、黙っていなって。 巨人気取りのぼくの頬、簡単には消せないように、虎のひげを描いてやった。 酷い事をするんだね。 酷い事?見てるだけで、僕の事を止めないオマエはどうなんだい?。 僕は、止めて欲しくて、止めて欲しくて、ぼくを痛めつけているんだからな。
雪の華がひっそり、咲いたから、僕は、誇らしい気持ちだった。
あいつの記憶、なぜって…。僕が知らない記憶を手にいれたも同然だったから、なんです。 僕が知らなかった記憶は、あいつも知らなかった記憶に、違いなく、それは、すなわち、前世の記憶に変わりない。 歌う事を禁じられた歌姫は、背中に紙切れを貼りつけられた男を、どう思っていたんだろう?。 死神の隣にひっそり、佇む歌姫は、僕達ご、濃いめの檸檬汁を混ぜた炭酸水をご馳走してくれた。 歌おうと口を開けば、夜の闇。 銀河系より、ずっと先の、孤独から流星群が、床に広がっていくから、あいつは僕の首根っこ引いた。 これに、触れたら、たちまち、凍りついちゃうんだよ。 平気なのは、死神だけなんだから。 死神は、馬鹿にしたように、僕の顔つきを真似ているから、僕は、とっさに、天窓の片隅に逃げようとしていた、ぼくを問い詰めた。 あの、僕を真似た死神と、死神に真似られた僕、どっちが、いいんだい?。 君って、結構、幼稚な所があるんだね。 ぼくがこたえるのと、おなじくらいに、歌姫の口が、子供の惑星だから、腹がたつんだ。 床の宇宙に漂う、子供の惑星は薄緑、それは、ぼくが僕に出会った、五月の時間そのもので、それが、答。 わかった?。 それなら、今夜は、この天窓に泊まる事にしようよ。 今なら、蒼い月の影絵に間に合うから。 天窓、天窓、天の窓、この星で隠された、全ての魂が集う窓。 隠された物なんか、ないだって?。 それなら、きみの家の下、大漁骸を説明してごらんよ。 骸がガシャコショ、ガシャコショ歩くたび、笑いこけるから、人間の足音なんか、なに、ひとつしやしないじゃないか。 天窓の番人きどりは、生意気そうな下級生で、その、掠れた声を、僕は楽譜に写したくなったのに、あいつは僕の万年筆をとりあげた。 たとえば、あの、番人が、もう一人のぼくだとしたら、それでも、君は、楽譜に写すつもりな…。 言い終わる前に、ゆっくり、ぼくの肌に沈み込む万年筆のインクは、白色で、これなら、僕の事がだれにも、バレる事はないんです。 万年筆のインクが、ぼくの中に流れ込むのは、魂の感染で、どの傷みよりも、ぼくは生きている事を実感できていたから、気づかれないように、雪の華を咲かせました。
世界が終わる前に、僕達を迎えに来たのは、青い自転車で、午前五時の青い光は、僕の友達の鎖骨の曲線を遺跡のような影をつくるのに充分だった。
いつしか、呪いが降りかかる前に、あいつらの事を呪えばいいんだよ。 ドウ・ジィ・ダリアは花壇の海から、語りかける橙の花弁で、僕達は言う通りに、呪いをかける方法を探す事にしたんだ。 ぼくが迷いこんだのは、汽車が甦る前の線路だったんだ、ほら、夏祭りの夜に、湖に沈みこんで行った汽車の事さ…なんて、言っても、きみがこの町に来る前の事なんだけとね。 あいつは、僕が、感情を抑えられなくる方法を何から、何まで知っている。僕は、自分がこの町に存在しなくて、彼といられなかった事が、前世の償いを探りあてられないくらいに、悔しい。 悔しいから、僕は、吸血鬼のように歯をたてた。 二人乗りの青い自転車は、錆びついた、喘ぎ声。 体育館の壁に飾れた、奇妙な抜け道に。それは、傀儡の患者が描いた夢想。 そう、呪うべき存在はそれ、なんだよ。 彼の首筋の歯形は、僕の物で、それは、吸血鬼にすらなれない事をしめしているから、途端に悲しくなってきた。 こんな、僕にでも、あいつは、優しくて、吸血鬼になれない僕のために、代役をしてくれる。 あいつの八重歯が、僕の世界を突き崩す寸前、線路を、たった一人で歩いていた。 ぼくは、何度も死のうと思ったのに、死に方がわからない。 死に方がわからないから、助けてほしいんだ、ぼくの事を助けてくれたら、彼は僕に全てを捧げてもいいと、古びた手帳に、星がちりばめられた、手紙をよこしてくれた。 星がちりばめられた手紙を旅しながら、漕いでる自転車は、あいつが後ろで僕が前で、一台しかないから。 僕は、やっぱり、後ろに乗せている時がいいな。 ぼくは嫌だな、それって、黄泉の世界から大切な人を連れてきた人の話を思い出すから、空っぽの世界は、そう、神話の世界から、なにも変わってやしなかったんだ。 その、証拠にぼくたちの問いかけに、大人は、気が狂ったふりをするだけなんだもの。 気が狂ったふりをするしか能のない、大人ばかりが、集まって、ひとつの島が阿呆船。 見えない悪魔を作り出して、自分達が悪魔の餌食になったなんて、間抜けだよね。 やっぱり、僕の確信は正しくて、ぼくはよく見抜いているから、自転車の速度をあげた。 どうしたの?。 ゆっくりがいいんだけどな。 僕は、炭酸水が飲みたくなったから、ねぇ、炭酸水を飲める店を探してるんだ。 寝泊まりするはずの、公衆電話を過ぎた先にあったのは、少し傾きかけた酒場で、僕達は入る事ができるかな?。 僕が心配していると、お金がもらえるなら、こんな事を気にする人なんて、もう、いなんじゃないの?。 僕の肩をだくあいつの手のひらは暖かいのに、比べて、酒場にいるのは、眠ったままの店員も、死神だけで、死神は仕方なさそうに、炭酸水の注文の仕方を教えてくれたから、僕は、言う通りに、ズボンのベルトを抜いて、太陽を破るように、店員を叩いて馬乗りになってやった。 弦楽器のやつも隠れてたんだんね。 あいつが、壊れかけた電灯を口で消したのと、地下室から、店員が炭酸水を持って来たのが、同時だっから、台無しにされたようで、悔しくなった。 こんなんで、悔しがるなんて、君は本当、子供っぽいんだね。 漠迦にしてるのか、どうなのか、それすらも、わからない。 どうせ、客は死神だけなんど、僕は、あいつを床に倒すと、こめかみに僕のこめかみを、地下の歌声が響くくらいに押し当ててやった。 ひどいや。 あいつの涙が床に転がって、あてのない、雪の華。
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