そらいろキップ

言葉や国は関係なしに
汽車に乗り 眠り続ける少年の知らない
記憶の底の底の世界樹が

すべての、真実。







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忘れた数の月の夜 

懐かしさ。

優しい人に 出会った夜に
大切な人のことを重ねていたら
卑怯なことだと
せめられた

半分の地下の部屋は  
暖かいのに 寂しい
寂しいのは
彼が
涙を浮かべていたからです

なにも
わからなかった
涙の意味も 
言葉の意味も 
僕には

それは 
太陽がのぼる前に 
部屋の隅
電気スタンドの根元に
沈んでしまったから

やりなおせそうにない

月夜の煉瓦塀の坂道は
いままで優しかったのに
知らないふりの
冷たい背中です

いろんな事が心に
絡んでくる
不安の原因は
よく陽のあたる家から
ようやく出会えた 
大切な人と
引き離された夜に始まります

どんなに手を伸ばしても
届きそうにもない 
星の隣にあるから
どうにもならなくて
情けないままです
あんなに 
すみきっていたのに
ひどい言葉を
あびせられて
あっけなく 
世界は濁っていく 

そりゃあ
僕にも 悪い所は
あったけどさ

太陽と月をたくさん数えたら
濁りがとれる日が
くるかもしれませんよ
嘘か本当か 気休めなのか
よくわからないことを
枯葉の海で
云われてから  
数えるのが面倒になるくらい 

それだけの
太陽と月が
いれかわったよ


忘れた数の月の夜
友達の
笑顔と言葉は
5月の隠れ家で
僕に水をくれた人に
重なるものがありました

結局
僕は
卑怯者かもしれないけど
今度ばかりは
やりなおせそうな
気がしてきたよ

ずうっと 
続くものだと思っていた
世界の濁りを
とりはらってくれたのは
なにものにも
とらわれない
純度の高い
彼の
言葉です

忘れた数の月の夜
蛙が嫌いな
男の子の言葉に
僕は
助けられたよ

posted by 永島大輔 20:28comments(0)trackbacks(0)pookmark





つながらない糸

暑い夜は まるい模様を描きながら
背中にうきあがる 彼の汗に
いくつもの 月を宿らせていたから

声の 欠片が
それは パズルのように 
生まれゆく声と 
壊れゆく声の区別が 僕には
つかなかったから

月のいくつかを くすねて
八重桜での
待ち合わせの 合図を
考えることしか できなかった

ことしは
つながらない糸から
ずいぶんになるはずで

海の記憶をたぐいよせる
あの お香のゆくえを
探しあったときの

彼の汗の

月が 沈んでゆくよ



posted by 永島大輔 18:16comments(0)trackbacks(0)pookmark





むれなす声の

むれなす声が むかうのは
むれなす声の まわりの人達

このやいば
このやいばが使いたくて 
たまらない 人達が

えらびぬいた闇のなか

それは なんの意味もなさなくて

まんてんの
満天の星空のように

このやいば
このやいばが使いたくて

しかたがない人達と暮らしている

青く光るむこうがわの

悪魔は遠くの人ではなくて

すぐとなり

こどものこどもをだいているよ

posted by 永島大輔 20:27comments(0)trackbacks(0)pookmark





輝く隙間

見えない音楽ばかり増えてゆく
夜の空は
小さな輝く隙間が
散りばめられていて
届かない
扉ばかりで

壁画の晩餐から
何も変わらないで

月だけが
壊れ続けているような
気がしてくる

壊れ続けた
月は錆びた椅子の
たもとから

離れられないまま

裸足に
ゆっくりと 突き刺さるけれど

なんの
足跡ひとつ残らなかった








posted by 永島大輔 18:43comments(0)trackbacks(0)pookmark





シャツをつかむことしかできない

取り壊される事の決まっている
白い壁の部屋は

そのまま 夢のような日々で
続くことがない 寂しさとともに
続いてしまうことの怖さが

まとわりついていた

たいして飲むことの
できないお酒を飲んで
足元のおぼつかない
彼が
白い壁に描いたのは

遠くの海に見える

乗ることのできない
輝いてばかりの観覧車だった

いつになっても

空へ踏み出す 瞬間がつかめないから

異国の文字が水色で記された

彼のシャツを つかむことしかできない





posted by 永島大輔 17:53comments(0)trackbacks(0)pookmark





逆さまにしてくれた

ひとつきも
ふたつきも

遅れてくる季節風は
出会うのが
遅くて短い間だった

丘の家


誰かとこんなふうに話していると
ふと

あの日
ふいていた風がどんなだったか
そんな ことばかり

楽しい事のほうが多かったはずなのに
悲しい事のほうが多かったように

思えてきて 仕方がなかったけれど

遅くれてくる 季節風を

まとうようにやって来た

短い

手紙が 逆さまにしてくれた





posted by 永島大輔 20:46comments(0)trackbacks(0)pookmark





音と糸

ゆられ ゆられ
地の底から ふいてくる風は

金色の糸です

金色の糸は

丸い水を縛りあげる
つもりでしたが

縛りあげてみれば
金色の糸

残るのは 聴いてもらえない
音ばかり

はるか昔の
出来事の正しさばかり

方角のわからぬまま
投げる礫は

糸の持ち主の
足に絡みつく
蔦の歌声には

何の意味もなさないから

聴いてもらえない
歌ばかり

地の底から響きます
posted by 永島大輔 22:16comments(0)trackbacks(0)pookmark





いるとか、いないとか。

月の夜に歩く路地は
きしんと 軋むラムネ瓶の破片で

鳥籠を真似た 窓ガラスにうつる
青い影は

丘の上で離ればなれになった
あの
ただ ただまぶしい5月だった

騙すように
思いこんだのは

いるとか
いないとか どうでもよいことで

左手にできた火傷と
彼の右手にできた

痣のことばかり考えているうちに

僕は小さな
みずたまりの月を砕いてしまっていた
posted by 永島大輔 20:04comments(0)trackbacks(0)pookmark





うたごえ

もう聴くことができないのに

いつまでも
すみきった 水辺みたいに
のこる うた

白いガラス
破片を詰襟から
はらうときに 大切な殻を

きしむ床に 無くしてしまった

そのせいで

いつまでも 帰りかたがわからない
いつまでも 大切なあの人の顔を

おもいだせない
posted by 永島大輔 21:36comments(0)trackbacks(0)pookmark





ほんの一握り

森の神様に出会うことなく

夜明けがきたから
月に何度かの 図書室にむかうよ

宛のない手紙は
郵便屋さんが届けにくるから
心配しなくて大丈夫


彼は
かつて
この世界を救う
術を教えてくれた
ゴットランドという島に住む
郵便屋さんに似ている

彼は
救いにも似た 宛のない手紙を届けに

雪に閉ざされた
神の森を越えられるんだ



身に覚えのない話は
覚えられない話

実際

生きているあいだの事で
覚えられる話は ほんの一握り


宛のない手紙に書いてあるのは
忘れらそうにもない


大切なことばかり

posted by 永島大輔 19:55comments(0)trackbacks(0)pookmark