そらいろキップ

言葉や国は関係なしに
汽車に乗り 眠り続ける少年の知らない
記憶の底の底の世界樹が

すべての、真実。







トオルくん

あいかわらず夜の散歩。
都会と違って、田舎の路地裏は目が慣れてくるまで、スタスタ歩けない暗さで、暗闇の中に障子窓が浮かんでいたりして、時折、どこからかオルガンの音が流れてくる。
暗闇に輝く水溜まりは浅い事はわかりきっているのに、ふとしたはずみで落ちてしまいそうで、ゾクッとする。

こんな時にトオルくんが一緒にいたら、向こうの世界の言葉を翻訳してくれるのに。トオルくんとは、ある冬の夕方に、勝手に人の部屋に入ってきては、ウソかホントかわからない話をひとしきり喋っては、どこかへ消えてしまう少年。僕は歳をとるけれどトオルくんは初めてあった冬の夕方から、そのまんまだ。
そういや、しばらく現れていないな。
たぶん、路地裏のどこかで野良猫探しやギター弾きのお兄さんの歌を聴くのに夢中なんだと思う。

暗闇の中で、ひょっこり出会ったらどうしていたかたずねてみるつもり。
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神谷トオルのこと

中学の2年生の春に、神谷トオルが転校してきた。
魚のように駆けているかと思うと、人気のない屋上へ続く階段に座っていたり。
何がどう違うのかわからないけれど、あいつは違う世界から転校してきたんだ。
僕は確信していた。

町で星空に一番近い公園。──それは優しい鯨の背中に似ている──に登った夜に、あいつも登っていた。
ラジオ片手に。
あわせる周波数はラジオ欄に載らないから、郵便受け。

神谷トオルの友達が工作で作ったロケットが本当に飛んでしまって、地球に戻れなくなったから、宇宙から声の手紙が、郵便受けにやってくる。

一緒にロケットに乗っているライカ犬のラッキーの声とともに。

あいつは悲しそうだけど、はりきっている友達の声と、ラッキーの声を聴かせてくれた。

星空の星のどれかが、友達のロケット。

一緒に探しているうちに、星が消えていって朝になっていた。

見つける事ができなくて、しょんぼりした神谷トオルと何を話したのか覚えていないけど、公園のふもとでチョコレートパンを買ってかじりながら、僕たちは家へ帰った。
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セロハン恐竜

「セロハン恐竜」   神谷トオル

 昨日の夜は雪野原にセロハン恐竜を見にいきました。
セロハン恐竜は名前のとおり、セロハンみたいにはんぶん透明です。
鳴き声はなくて、セロハンみたいにはんぶん透明で風にふかれてゆらゆらしています。

セロハン恐竜を見る事ができるのは、雪がやむ真夜中です。
野原につもった雪に月明かりが反射してセロハン恐竜が照らしだされます。

セロハン恐竜は音もなく、のっそりのっそり雪野原を歩いていました。

また雪が降ってくると、セロハン恐竜は雪にうもれて雪野原に消えてしまいました。
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線路のしっぽ町  小さな島

線路のしっぽ町では、雪のふりはじめた夜に笛がなります。
川と川にはさまれた、小さな島から流れてくる笛の音をきいているとサーカスの跡地に足をふみいれた日のことを思いだします。

あの笛が何の楽器でできているのか知りたくて、夏休みに作ったいかだで川を渡りました。


空からふっている雪は川から空へ帰ります。
さかさまに見ると空から雪がふっているみたいです。


夏休みの昼さがりと違って、ひとけのない島では、ほたるのかわりに雪がひかります。


笛吹きは夏休みに作った小屋のなかにいました。

笛は枝にしか見えないけれど、枝はいつしか笛になります。

──その 楽器なんていうの?
──これの名前?  オレのことを思いだすことができたら教えてやるよ

笛吹きの少年は、くるみのような瞳をキョロキョロさせてつぶやきました。
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すなばラクダ    神谷トオル

 桜でも見ようと思って窓をあけました

 月に照らされた桜はとてもきれいです

 でも夜中に窓をあけたのがいけませんでした

 桜の花びらにまじって 星がころがり落ちてきたのです

 いたずら星でした

 いたずら星は ぼくのパジャマのスソからはいると

 身体中くすぐりだしました

 どうしたらいいのかわからなくて 

 いとこの大樹くんに電話しました

 大樹くんは ねむそうな声で

 そういう時は すなばラクダ…おやすみ…

 と教えてくれました

 すなばへ行くと すなばラクダは月をながめていました

 すなばラクダの口にパジャマのソデを近づけると

 すうっと いたずら星を吸いだしてくれました

 おかげでくすぐったいのはおさまりました

 ぼくはお礼に すなばラクダに

 チョコレートをあげました

 

 

 

 
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物置きで待ち合わせ

 学校の階段下の物置きは昼寝をするのにうってつけ

 物置きに気になる落書きがある

 ぼくと同じ名前の神谷トオルと三好礼という生徒が

 待ち合わせの約束をした落書き

 その時まで あとすこし

 ぼくと同じ名前の神谷トオルはどんな生徒なんだろう?

 夢の中での約束を守るような気持ちで

 2人がくるのを待ってみる
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マーブルチョコレートの望遠鏡   神谷トオル

 ☆月◎日(銀)

 今日はいとこの大樹くんと探偵団ごっこをしました。
 だれもすんでいない古い家に入ってきました。
 家のなかは、くものすやほこりだらけでした。
 きたないので入るのをやめればよかったと思いました。
 家の中でマーブルチョコレートの筒を見つけました。
 ぼくが買うのと違う絵なので、昔のマーブルチョコレートの
 筒のようです。
 なかにはチョコレートのかわりにビー玉がつまっていました。
 のぞいてみると、ビー玉に風景がさかさまにうつるのでおもし
 ろいです。
 このマーブルチョコレートとビー玉の望遠鏡は、時々、昼
 間でも、夕やけや星がみれます。
 おもしろいので何回も大樹くんとかわりばんこでみました。

 こんなにすごい望遠鏡を手にいれることができたので、探検
 しにいってよかったと思いました。
 
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たまご本屋        神谷トオル

 1月1日

 きょうはお年玉をもらえたので いとこの大樹くんと
 
 たまご本屋にいってきました

 たまご本屋は 本屋さんのお店の はんぶんで 
 
 たまごを売っています。

 ラクダのたまご ねこのたまご ゆきだるまのたまご

 いろんなたまごがあります

 いちばんほしかったのは ロケットのたまごです

 ロケットのたまごは とても高いです
 
 大樹くんもほしかったみたいなので そうだんして

 ふたりのお年玉をあわせて買うことにしました
 
 ロケットのたまごをわらないように
 
 気をつけながら ふたりであたためました
 
 あたためながら ぼくも大樹くんもねてしまいました

 トオル!たまごがかえったよ!

 大樹くんにおこされました

 たまごからかえったロケットは  
 
 乾電池の単1くらいの大きさです
 
 ピョンピョンとびはねています

 ぼくと大樹くんはロケットをつかまえると

 マッチをもって 空き地にいきました

 10 9 8…ふたりで数えて 0の時にロケットに
  
 マッチで火をつけました

 ボーッ!と音をあげて ロケットは月にとんでいきました

 しばらくしてから

 「ロケットはいつもどるの?」

 ぼくと大樹くんは おたがいにおなじことをいいました

 いつまでもロケットはもどってきませんでした

 ぼくと大樹くんは なんだかさびしくなったので

 すこしだけにがいチョコレートを食べながら

 家にかえりました
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月をすくいに   神谷トオル

 ☆月★日(銀)

 きょうはいとこの大樹くんと月をすくいにいってきました。
 持ち物は月すくいようのあみ。すこしにがいチョコレート。
 ほたるいし。つきをしまうとき使うはこ。
 
 月をすくうのは、月がみずたまりのむこうへしずむしゅん
 かんがねらいどきです。
 
 みずたまりにはいる時に注意しなければならないのは、ふかさ
 はヒザくらいなのでおぼれることはありませんが、たまにいた
 ずら星がかくれていて、赤い星にさされるとやけどをします。
 ぼくは2回右ひざをやけどしたことがあります。
 大樹くんは用心ぶかいからいたずら星にさされたことがあり
 ません。
  
 月がみずたまりのむこうにしずむしゅんかんに月すくいようの
 あみですくいあげるときに、大切なことはふたりのいきをあわ
 せることです。
 そうしないと、月が地面の反対側に逃げてしまいます。
  
 やった!きょうは月をすくうのに成功しました!
  
 ぼくと大樹くんで大事にはこにしまいました。
  
 家に帰ってから部屋の中で、月をうかべることができるとおも
 ととても楽しみです。
 
 ぼくたちはころんだりしないように、気をつけて帰りました。 
 
 あんなに気をつけたのに、部屋の中ではこをあけたら、月
 はいつのまにかにげだしていました。

 とても残念でした。あまりに残念なのでぼくたちはすこし
 にがいチョコレートをたべてからねむりました。
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